ユニセフ(国連児童基金)が5月、主要先進国36か国の子どもの幸福度を比較した報告を発表しました。日本は総合14位で5年前の20位より上げたものの、精神的幸福度は32位と低迷。身体的健康は1位であるのに対し、心の幸福度が低いのは自殺率の高さによるものだと言います。日本の子どもの自己肯定感の低さも、これを表していると思います。
じっさい2024年の子どもの自殺数は過去最多の529人です。3年連続で500人を超え、子ども支援団体や関係者の間に衝撃が走りました。学校や家庭、地域などでのいじめ、暴力、ストレスなどが背景にあり、対策が急務であるのは言うまでもありません。
日本の評価に関してユニセフが指摘しているのは、親との会話の頻度の低さです。家庭や学校での人間関係が子どもの心に影響を及ぼしている、という指摘は、私がかかわっている「チャイルドライン」の活動からも思い当たります。人と関係がうまく築けない、ささいなことが不安の種となって心を重くしている子どもに何人も接してきました。
そういう子が、話を聴いてもらうことで心が軽くなったという事例も知っています。問題の解決に至らなくても、とりあえず今日のところはやり過ごす、それだけでも子どもの心の健康にプラスに働く。それなのに、それができていない。
国連子どもの権利委員会は以前から、日本の子どもは学校や家庭で意見が聞かれていない、人権保護のための独立機関が設置されていないことを問題視して日本に意見勧告を出していました。元権利委員会委員長の大谷美紀子さんは、日本で子どもの権利条約の認知度が低いことも指摘しています。
「権利の主体」としての子どもの尊厳の確立が日本では未熟と言わざるを得ません。子どもの幸福と子どもの権利は密接に関連していると思います。東京都に子どもの声を受けとめて代弁するこどもコミッショナー制度をぜひつくりたいと考えるのは、そのためです。