「地域と学校の協働」テーマにすぎなみ教育シンポジウム

「○○小の子」が「うちの子」になる

地域運営学校(コミュニティスクール、CS)と学校支援本部は杉並区の教育施策の「目玉商品」だと思いますが、区民の周知と理解はまだ不十分です。そのせいか、1月23日、区教育委員会が「地域と協働する学校をつくる」と題して開催したイベントは立ち見が出るほどの盛況でした。

06年度に初めて導入されたCSは、4校から始まり09年度末には12校に拡大。また学校支援本部は和田中学校の取り組みをモデルに区が07年度から事業化し、現在までに52校設置、次年度中に区内全校に拡充する予定です。

学校支援本部は、要するに学校にかかわるボランティアのネットワーク組織と思えばよく、比較的わかりやすいシステムです。ところがCSは、「地域が運営する学校」といわれても、難しいしイメージしにくい…。

地域(人々)のかかわり方の質と深度の違いだと思いますが、CSは全校に広げるのでなく「計画的に拡充」するとしている。公募をふくめた「素人」の区民も加わった組織、「運営協議会」が区教委や都教委に対して人事にまでも意見を言い、校長に対しては運営方針を承認し、かつ教育活動について意見するという重責を担っているので、生易しいことではありません。

CSの運営協議会会長、藤井耐氏もシンポジウムのパネリストとして、ふつうの人に責務が課せられることへの疑問を率直に述べました。私学の理事長でもある氏が、「CS運協の位置づけは私立学校法人理事会の規定と似ている」と指摘したので、これはわかりやすいたとえだと思いました。

一方、学校教育コーディネーターを経て現在は学校支援本部事務局長の平田さんは「ふつうの人が承認できる(のがいい)」、優れた活動がCSなら継続できる、と可能性に期待をかけます。

CSも支援本部も未体験の学校の保護者としてパネリスト参加の渡邉さんが、先行事例を見学したときの話。学校にかかわるようになった地域のおばちゃんが「○○小の子」でなく「うちの子たち」と言うのを聞き、いいなと思った、と。ちょっといい話です。

また小学校校長会の倉澤氏は、「杉並区ほど校長の発想を生かして自由にやらせてくれる区はない」と繰り返し述べたので、私は区の教育施策を見直す気になりました。

シンポのコーディネーターを務めた早稲田ラグビー出身の中竹竜二氏。三谷小の運協会長です。「CSはゴールのない事業」と述べて始まったシンポでしたが、現場の熱意がコメントにも感じられ好感が持てました。

区のイベントは、ギャラの高い有名人を連れてくるより、現場からの実践の話を聞くほうがずっといい、と思います。