菅首相の「TPP参加検討」発言を受けて農業関連団体の反対運動がメディアで取り上げられるたび、「日本の農業を守るのか、切り捨てるのか」という二者択一問題として扱うことは何か違うのでは、という気が私もしていました。
もっとも前原外務大臣の「GDPの1.5%にしか過ぎない第1次産業のためにほかの産業が犠牲になっている」うんぬんの発言は論外で、そんな言い方をするなら「農業は守らなければダメ」と私は言わなければならない。
でも経済システムなど国際化がここまで進んでしまったいま、もう後戻りは不可能でしょうし、経済産業と農業との間の溝を二分させるような議論は不毛でしかないと思います。榊田さんも「かつてのコメ自由化論議と構造は同じ。でも背景は変化」といいます。
「背景」とは拡大・複雑化する諸外国との枠組みであり、そのもとでの貿易問題といえます。だから榊田さんがいうように、グローバル化のもとにおける農業の構造自体の改革が必要です。政府が設置予定の「農業構造改革推進本部」もおそらくそう考えてのことでしょう。
また「背景」として、国際連携で日本の先を行く韓国に対する焦燥感も大きく作用しているようです。しかしだからといって、日本の財界が求めているような「強い農業」を志向するのか。たとえば生産拠点を海外に移すことで日本の農地を放棄すれば土地の荒廃は避けられなくなり、方向性としてはとても賛同できません。
政府は、環境保全をはじめとする農業の多様な価値を評価するフランスの政策に学んでほしい。また私たちは「安ければいい」だけでない消費者の選択を市場で示していきたい。そうすれば農業を壊すことにはならないと思うのです。