昨年暮れに出た東京高裁の判決は、時代錯誤と言いたくなるようなもので驚きましたが、今回の判決により、その判断を確定させたことになりました。そのことは重いはずで、判例を残したことはよかったのだろうか、という疑問がわきます。
自治権の確立やプライバシー権の保障を求めて争ってきた区としては、かえって理想から遠ざかる意味で、後に影響を残す結果になったのではないか。4年前の提訴当初は「横浜方式」が存在していましたが、状況が変わってもなお、最高裁にまであえて持ち込んだ区の判断はよかったのでしょうか。
健全なIT社会の実現を目指すのであれば、上訴すべきでなかったのでは、とこの判決が出てなおさら、思わずにいられません。
裁判を起こす前の02年、区は住基ネットについて区民にインターネットで意見を問うなどしました。そのときの区民の反応が、その後の「住基ネットシステムに対し全面的によしとしない」区の対応を後押ししたことになります。
しかしそれ以降、区は区民意見を調査、聴取してきませんでした。04年、議会で提訴について可否が問われたことはありましたが、それ以外に議会でも決を採ることはなかったし、まして区民に対し意見を聞く、意思を諮ることはなかった・・・。
ここで区の取り組みに区切りをつけ、総括の意味でも、意見聴取を行うべきだと思います。その中で、区がこれから着手しようとしている研究提言機構、運用を監視する第三者機関、緊急時対応策を提案すればよいのに、と思います。
私が一番気になっているのは、非通知希望を出した区民の情報の扱いと、また区に転入してきた人で不接続希望者のリストです。今後は接続をいやだと思っている人も住基ネットに接続されることになりますが、いやだという意思を表明した人の情報がいつまでも残っていて悪用されるなどはあってはならないことです。区は「消去する」と明確に答弁しましたが、確実を期してほしいと思います。
写真 西荻窪駅北口で朝遊説をする 7/17