権利条例が支える 子どもに向けるまなざし

川崎のフリースペース「えん」

神奈川県川崎市では、国連の「子どもの権利条約」に日本が批准 した94年に第1回「子ども会議」を開催し、これがのちに「子どもの権利に関する条例」策定に至る動きのベースになりました。昨年7月JR「津田山」駅近くの工場跡地にオープンした「川崎市子ども夢パーク」は、00年にできた条例を具体的に実現化する施設として建設されたものです。約10,000㎡の敷地にはプレーパークやログハウス、広大なグラウンド、開放的な建物には音楽スタジオや100人で会議ができる子ども会議室があり、その中にフリースペース「えん」が設けられています。1月末のある日、生活者ネットワークの仲間とともに見学させていただきました。

「えん」がユニークなのは、不登校の子どもの居場所「たまりば」を12年間続けてきた民間NPOが、市の委託により運営にあたっていることと、教育委員会の施設でありながら「学校復帰を目的にしない」と堂々とうたっていることでしょう。

「えん」で子どもは仲間と一緒に何かするもよし、ひとりでいるのもよし、1日をどう過ごすか自分で決め、居場所が確保されることで自己肯定感を取り戻してゆくことが目的です。当初は定員30人を想定していましたが開設して4ヵ月で90人が通うようになり、ひきこもりやLD児をふくめ年齢の幅は7歳から35歳におよびます。

最近不登校児の「受け皿」的なシステムが杉並でも設置されていますが、当事者の子どもにとってそれが救いになっているのかどうか、検証が必要です。もしなっていないとしたら何が違うのか。NPO「たまりば」代表の西野博之さんの言っていた「子どもに向けるまなざし」という言葉に答えのヒントがありそうです。
そのまなざしを社会のしくみに生かすには、現場の活動と行政が協働する必要があり、そのときに基本的支えとして区の条例がやっぱり必要だと思うのです。