『シェーナウの想い』上映会@高井戸に集った人たちの「いま、できること」
原発都民投票の直接請求運動が目覚めさせた市民力が、いろいろな形の活動を生み出しています。たとえば住民投票の学習会や脱原発を実践する情報交換の場、映画の上映会。2月11日には、直接請求のための署名活動を通じて知り合った人たちが高井戸で『シェーナウの想い』の上映会を開きました。
『シェーナウの想い』は、森に囲まれたドイツの小さな町が「脱原発」を貫くしくみを獲得する、2008年制作のドキュメンタリー映画です。
1986年チェルノブイリ原発事故により、原発のない未来を子どもたちに残したいと考えたシェーナウ市の人びとは、1度目の住民投票で「脱原発」を選択し、それを現実のものとするために自分たちで自然エネルギーの電力会社を興します。その会社が2度目の住民投票によって市の電力供給の認可を勝ち取り、さらに大企業が独占していた電力網を買い取るべく資金を集め、事業を軌道に乗せていくまでの実話が、この映画のストーリーです。
住民投票の実例がここにあります。2度目の投票の結果が出て、大企業に挑んだ市民事業が僅差で勝った瞬間の場面は感動的で、涙で目が曇ってしまいました。が、その後で思ったのは、「よその国」の事故が原因で脱原発を選択する町がある一方で、「自分の国」で事故を起こしていながら2年もしないうちにそれを忘れようとしているこの国のありようは何なんだ、ということです。
映画の後は、「出前エコ会議」。まず東京電力との契約を切りソーラーパネルでつくった電気だけで暮らす国立市の女性の、電気の自給自足実践報告を聴き、つづいて参加者同士がグループに分かれてのディスカッション。約40人が6つのグループ、3つのテーマで話し合いました。
私が選んだのは「住民投票」のテーマで、ここは3人だけのグループでしたが、一番人気が高かったのは「いま私にできること」というテーマ。なるほどなあ、映画のなかのシェーナウの人たちに触発されて、「じゃあ自分には何ができるのか」を、自分に引き寄せて突き詰めようとしているんだ、と思いました。それは「自分から、まず始めよう」という意思の表れともいえると思います。
この日の朝日新聞には、スイスの小都市での核廃棄物処分場誘致をめぐる住民投票の話題から始まる特集記事が掲載されました。その論旨は、住民投票が必ずしもいいことずくめではなく民意を諮るツールとして「あだ」になることもありうる、とあります。う~ん、民主主義の光と影、でしょうか。難しい。でも、それを経験することは市民も民主主義をも必ず成長させるに違いありません。