草地や農地は比較的短期間で生成することができるのに対し、屋敷林は数十年から百年かけて出来上がるもの。ひとたびそれがなくなれば、復元させるのは非常に困難であり、単にみどりの消失と言う以上の、重い意味があります。
今の法制度の下では、相続が発生すると税を支払うために屋敷林を含む土地を売却せざるを得ず、その土地にマンションや戸建の住宅を建てるため樹木が伐採される、という問題が繰り返されています。現にいま西荻地域で起きている、1本のケヤキの木をめぐる問題は、まさにそのような例にあたります。
2000年に貴重木に指定された西荻北のケヤキは、すでに指定解除されて伐採の可能性が出てきました。これを危惧し「切らないで」という声が広がり、存続を望む内容の署名が、2か月の間に8000筆以上集まったのは、この木がいかに地域の人たちから愛されてきたかを物語っています。
樹齢200年におよぶと言われる株立ちの巨樹は地域のランドマークとされ、最近ではそのブロッコリーを拡大したような形から「トトロの樹」というニックネームで呼ばれています。株立ちとは、根本から何本もの幹を立ち上がらせた樹形だそう。
先日、8648筆の署名が地域の人々から区長に提出された場に、私も他会派の議員たちと同席しました。現在の所有者にはこれまで切らずに待っていただいているようですが、多くの住民や党派を超えて議会からも存続の希望が出されたことを区はしっかりと受け止め、所有者にはたらきかけてほしいと思います。
そして「みどりの都市」を掲げて緑化の推進に取り組んできた杉並区は、この「トトロの樹」を保全するために、あらゆる可能性を追求してほしい、その覚悟のほどを確認しました。これに対し区は、「誠意を尽くして所有者と折衝し、樹木を保全する方策を探っていきたい」と答え、期待をつなぎました。
写真 大ケヤキの前で 中央はこの木の向かいに住む山中さん 5/24