というのは、97年6月、署名活動をへて杉並区議会あてに出した「NPO活動推進法の制定を求める意見書を国に提出してほしい」という内容の請願が審査されることになったとき、請願者として補足意見を述べ、また当該委員からの質問に答えたりしたのが私だから。
その結果、請願は採択されて意見書が国に提出され、その後国ではNPO活動推進法が制定され、やがて02年には「杉並区NPO・ボランティア活動及び協働の推進に関する条例」が制定されて現在に至っています。
区のNPO法人認証件数は、02年の条例制定により01年の52件から103件へと倍増し、以後は毎年増え続けて07年は279件。これらの活動を支援する制度として先の条例に「NPO支援基金」が規定されています。
この「NPO支援基金」をアピールするイベントとして20、21日に開かれた「すぎなみNPOフェスタ2008」。21日のメイン、ピアノコンサートを聴きに区施設のセシオンへ。チケットの売り上げが基金に積み立てられるというチャリティー事業です。
プログラムは全曲ベートーベン。もちろん嫌いではないけれど、ピアノのソロならショパンとかモーツァルトの曲を少しは入れてくれたらいいのに、などと思いながらも、演奏が始まればそんな苦言は吹っ飛んで、魅惑の世界にすっかりとりこまれました。
演奏は梯剛之、全盲のピアニストです。見えない人が体の神経を集中させて自分のいる位置を確認しているとき、たぶんそうするのだと思いますが、梯さんは演奏している間じゅうずっと、背中をぴんと張ったまま、まったく動きません。
ピアニストが演奏するとき、たいてい曲に合わせて上半身が自然に動く、というより動いてしまうのがふつうですが、ささやくようなトレモロでも叩きつけるようなフォルテでも、ラルゴからプレストまで、微動もしないピアニスト、それが梯さんです。
楽譜も鍵盤も見えなくて、どうやって譜面を勉強し正しく弾けるように、ベートーベンの芸術を紡ぎだせるようになるんだろう、と考えると、垂直に伸ばした背筋が彼の座標軸だと思えるようになりました。きっとあの背中にはほとばしる感性の源泉があるのにちがいありません。