首長が理想を語り夢見るのを非難するつもりはないけれど、実現ありきで進められてきた区行政の広報・啓発活動に対しては、区民をミスリードする危険性もあることから、十分に慎重であるべきでした。
また議会にも責任の一端があることを認識すべきです。研究会報告後わずか1年で実行に移されるとは想定せず、結果として議会は減税自治体構想が暴走するのを傍観していたことになるからです。
もしやり直せるなら、区議会は区長の研究会とは別の専門家によるオルタナティブな研究会を構成し、異なる側面からの理論を組み立てることをすべきでした。議会は区長と対等の位置にある二元代表制なのだから。
田中秀征氏は先の講演会(こちら)で「いま有効な経済対策は何か」という話題になったとき、景観計画をキーワードとし「街並みを良くする、街路樹を植える、電柱の地中化、看板の撤去などで地域雇用を生み出すことが可能になる。景観計画にそって事業を行うことは、10年後、20年後、100年後の世代にも納得してもらえる」と述べました。
このような税の使い方と減税と、どちらがより後世に貢献することか、明
らかです。
ある人は、減税自治体構想は「お金の使い方をいま決めないしくみ」だといいます。現在の要求を抑制し後の世代に白紙委任する、そのような人間観に立っている、という指摘は、奥の深い論点ではないでしょうか。
ともあれ減税基金条例は施行され、新年度10億円が積み立てられます。条例には議会のチェック機能を働かせる、という言わずもがなの付帯決議が追加されましたが、わざわざそんなことを言うまでもなく、議会の責任を果たしていかねばなりません。