施設退所後の子どもたちを支えるアフターケア相談所に都は委託費増額を
都内の社会的養護のもとで育てられる子どもは、約4千人。そして毎年およそ500人が、18歳になると法の規定により施設や里親のもとから離れ、社会に出ていくことになります。いきなり自立した社会人として住まいや仕事を探し自活しなければならない状況に置かれます。
さまざまな困難に直面し大きな負担と不安を抱える若者たちに対する、アフターケアとして、東京都は、相談や支援を行う「ふらっとホーム」事業を文京区と小金井市の2カ所で実施しています。そのひとつ、小金井の「ゆずりは」に5月8日、話を聞きに訪問しました。
児童養護施設等退所者のためのアフターケア相談所として社会福祉法人「子供の家」が東京都より受託し、2011年に開設した「ゆずりは」。相談は都内全域から寄せられますが、お金のない相談者が交通費を心配しなくてよいように「こちらから出向く」ことが多いそうです。
相談の内容は、自己破産、生活保護申請、DV、精神科通院の同行、国保・年金手続きなどの生活支援から、職業訓練校入学手続きなど就学支援、内職の提供や履歴書作成などの就労支援、不動産屋との家賃交渉などの住居支援…など重くて深刻、しかも多岐にわたります。相談者実数の2013年度実績は206人、そのうち施設退所者88人、その他は施設職員など支援関係者等です。
「ゆずりは」の特徴は女性の相談が多いことで、男性の約3倍。所長の高橋亜美さんは「女の子の場合は性被害とセット」だと言い、望まない妊娠の中絶手術に関する支援や、術後の精神的ケアの事例が多いそうです。
相談者に多い高校中退者に対しては、高卒認定資格があれば就労に結びつきやすいため、資格取得のための学習会を毎週開催するなど、ニーズにきめ細かく対応しています。
社会のセーフティネットの機能を果たしていると言えます。ところが年間1600万円の運営経費に対し委託費は735万円にすぎません。赤字分は法人からの持ち出しといいます。
生活者ネットはこれまでアフターケア施策の充実を議会で求め、都は昨年度から施設への自立支援専任コーディネーター配置を開始しました。先の定例議会での予算委員会の質疑では、この事業に対して前向きな考えを都は示しています。でもそれだけでなく「ふらっとホーム」への委託費増額は必至。現実に即した施策の拡充が必要です。