南部義典さんに聴く「憲法改正国民投票」 何が問題か
憲法9条に手を入れたい安倍首相のもとで、「早ければ年内にも」発議されると言われる国民投票。日本ではまだ一度も行われたことがなく、だれも経験していません。でももしかしたら1年以内にやってくるかもしれない。そのとき実際には何が起こるのか、具体的に何をするのか、今のうちに知っておかないとまずいことになるのではないか。そう考えて企画した学習会でした。
講師は南部義典さん、憲法改正国民投票について隅から隅まで知り尽くしている、このテーマの第一人者です。専門家だから、この制度の課題や未熟な点があまりにも知られていない現状に危機感を抱いていたのだと、お話を聴いてわかりました。講師を依頼したら即答OKだったのも、この問題について少しでも多くの人に知ってほしいと思われたからでした。
この「憲法改正国民投票」では、たとえば公職選挙で保障された「18歳選挙権」のように、現在は不備にせよあと4か月で実現する課題はいいとしても、少年法との関係は整合していないし、公職選挙では当たり前になっている「期日前投票」が未整備であるなど、利便性の低い制度でしかない、という問題があります。
憲法改正案に関する広報のあり方についても、期間について決まっているだけで「その実施概要が何も決まっていない」と南部さんは指摘します。国民投票運動の費用についても「何ら規制を設けていない」。公職選挙法で事細かく規制を定めているのと比べて、出処不明かつ多額の金銭がCMなどに投入される可能性のある制度は、「公平」「公正」の点であまりにも問題が大です。
まだ使ったことがないから「未熟」というか、「未整備」な点が多く、とにかく聴けば聴くほど「問題の多い」制度だと思います。「年内にも発議」などとよく言えるものです。
憲法9条の「2項を書き変える」案がどうだの、「3項を新設する」だのと言いますが、南部さんいわく「レールの路線図ができていないのに新型車両のデザインの話をしているようだ」。
しかし恐ろしいのは、それでもこの法制度に基づいて国民投票の発議を「やろうと思えばできてしまう」ことです。何しろ憲法違反の安保法をゴリ押しで通したり、国会の質問時間を野党から奪ったり、首相個人の政治私物化(もり・かけ問題)を一致団結で擁護したり、米国の核兵器推進路線を「高く評価」したり…という人たちなのだから。
議席の3分の2を持ったからと言って傍若無人のふるまいを絶対許してはいけない。国民投票は国民の権利なのだから、国民に有利なものでなければならない。南部さんのお話を聴いて、そう強く思うようになりました。