【外環】環境と暮らしを壊す道路はいらない

関越自動車道と東名高速を結ぶ約16㎞の外環道。大深度地下トンネル道路として掘削工事を始め、調布市まで進んだところで、昨年10月、真上の道路に特大の穴が生じる陥没事故が発生。以前から沿線上の家屋にもひびや損壊などの被害、河川で水泡の発生が確認されていましたが、調べたところ地中の空洞は他の3地点でも見つかりました。

原因として事業者が示した「施工ミス」は当然です。しかし「特殊な地盤」を挙げたのは、工事前の地盤調査がいい加減だったことを認めない不誠実な態度としか思えません。そして「大深度は安全、地上の環境に影響しない」とされてきたことはウソだったことがはっきりしました。

シールドマシン(掘削機)が認可された範囲外にまで逸脱して今回の事故が起きたことも分かっており、大深度法違反の疑いが濃厚です。

陥没発生以降、当然ながら工事はストップしています。ところが事業者は被害者への補償手続きに入る一方、事故周辺約40戸の住民に対し「地盤を補修するため2年間仮移転してほしい」という一方的な提案を持ち出し、抗議の声が上がっています。

自分の家の下を勝手に掘られ、「失敗したので直すから、家は全部壊して新しい家を造って住めるようにするから」といきなり立ち退きを迫られて納得できるものではありません。

地盤の補修はセメント剤や他の薬剤を流し込み固めるものだといい、元の土地とは別物になります。事業者の進め方は、補償手続きもそうですが、情報を個人ごとにしか開示しないため、住民の間に分断が生じつつあることも聞こえてきます。

外環道建設が決まったのは1966年、当時と現在とでは社会状況が激変しています。持続可能な環境への意識や保護すべき責任も、人口減少が明らかな時代の道路のニーズも変化している以上、55年前の計画はここでいったん見直すべきだと思います。少なくとも、自然環境や人の生活を破壊するような道路はいりません。