映画・オペラ・おたのしみ– category –
-
『イントゥ・ザ・ワイルド』 荒野をめざした青年の生と死
希望に向かった彼が捨てたもの 「ぼくもういかなきゃなんない」で始まる谷川俊太郎の詩『さようなら』や、「ひとりで行くんだ幸せに背を向けて」で始まる歌のタイトルにもなった、五木寛之の『青年は荒野をめざす』に共通するイメージに、私は昔から弱いと... -
自転車の走る町、川のある町はいい
環境志向、健康志向が進むヨーロッパ 今回のヨーロッパ旅行で気がついたこといくつか。 ザルツブルクの町に自然食専門のスーパーができていた。ホテルの部屋の照明がすべて白熱電球でなく蛍光ランプだった。バスルームに「環境のためエネルギーの節約にご... -
ムーティの『オテロ』 オペラワールド至福のとき
ザルツブルクにて③ バーナード・ショウが、「『オセロ』はシェイクスピアによってイタリアオペラ風に書かれた戯曲だ」と言っていますが、うまいことを言ったものだと思います。『オセロ』はもちろん大傑作ですが、それをもとにオペラ用の台本を書いてヴェ... -
フィレンツェの休日は雨もまたよし
ザルツブルク番外編 音楽祭を一時離れ、ウィーン経由でフィレンツェに来ました。フィレンツェはイタリア語で「花の都」の意味、ブーツの形でみるとひざの上の部分に位置します。イタリアは91年ニューヨーク在住時にローマとミラノに行って以来の訪問です。... -
ドン・ジョヴァンニよ、地に堕ちるまでは誇り高くあれ
ザルツブルクにて② モーツァルトのオペラの中で一番好きなのは「ドン・ジョバンニ」です。だからこれまでいろんな「ドン・ジョバンニ」(DG)を観てきましたが、今年の新演出ほど変わっているのは初めてです。 演奏のテンポがやたら速いのは、生き急ぐ若者... -
オリンピックの熱狂を離れて音楽祭へ
ザルツブルクにて① 夏休みをとって今年もザルツブルク音楽祭に来ています。ザルツブルクは世界遺産にも選ばれたオーストリアの古都。モーツァルトの生地、そして指揮者で音楽祭の産みの親でもあるカラヤンの生まれたところです。 またサウンド オブ ミュー... -
戦争を考える夏 実写版『火垂るの墓』をみる
ラストに監督の願いがこもる 杉並区役所1Fロビーで原爆写真展が開催され、人の目を釘付けにしています。原爆や戦争のことを思う夏。さいきん公開された、子どもが主役の映画の話を。 『火垂るの墓』といえば、野坂昭如が直木賞をとった小説というより高... -
フランス発のフェミニズムオペラ『アリアーヌと青ひげ』
パリ国立歌劇場の来日公演を観る フランスオペラには、イタリアオペラにはない、えもいわれぬ「薫り」があります。明らかにドイツオペラとも違う。グノーの『ファウスト』にしろドビュッシーの『ペレアスとメリザンド』にしろ、音楽に匂いがある、としかい... -
山本さくらさんモーツァルトを演じる
『フィガロの結婚』オペラティックコンサート パントマイムは想像力を刺激するアートです。その省略、誇張、象徴、時間・空間の超越。狭い空間でも演じ方しだいで大海原にも深い森の中にも、満員電車の中にもビルの屋上にもなるし、鳥にも少年にもおばあさ... -
『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程(みち)』をみる
なぜ粛清の連鎖は避けられなかったのか いま50代以上の人なら、1972年「あさま山荘事件」の実況をテレビの画面で見た記憶があると思います。私もそう。真冬の浅間山をバックに、民宿の建物の胴体に巨大な鉄球が振り子のように打ち付けられる。そして放水。...