オペラ映画『オテロ』に浸る

傑作を生んでくれた監督に感謝

毎年のことですがお正月なんて終わってしまえばあっという間。今年の三が日は、暮れから泊まりに来た義母の世話と家族が集まっての新年会以外は家でオペラのレーザーディスク(LD)を見て過ごしました。

私と夫がオペラ趣味にはまったころはまだDVDはなくLDの時代だったので、オペラのLDコレクションがわが家には約60本あり、休みの日の楽しみ、これさえあれば心豊かに幸せに浸れるのです。

DVDと違って昔のLPレコードと同じ大きさでかさばるしLPより重いのですが、当時はそれまでのビデオテープと比べて画質はもちろん音質が格段にいいので、オペラを楽しむにはこれだ、とばかりに集めたものです。

いまのDVDもですがオペラのLDには舞台で実際に上演した作品のライブ録画と、映画として製作されたものとあり、まったく別のジャンルといっていいほど両者は味わいが異なるものです。

私が何度見ても心を揺り動かされ見るたびにすごいなあと思うのは、フランコ・ゼッフィレッリ監督の映画『オテロ』。シェイクスピアの「オセロ」をオペラ化したヴェルディ晩年の作品を『ロミオとジュリエット』のZ監督がみごとというほかない演出とリアルな映像美で撮った傑作です。

肌の黒いムーア人であるオテロの幼少時のエピソードとして、アフリカの地で奴隷商人らしき男から母親と引き離される場面が映像に挟み込まれ、オテロという気高い将軍の人間性に深みを与えています。

主役のドミンゴ様といい、美しい妻デズデモーナ役のカティア・リッチェレッリといい敵役のフスティーノ・ディアスといい、これが本職の俳優でなくてオペラ歌手ということが信じられないくらい、迫真の演技をZ監督は引き出しています。歌唱も最高。

デズデモーナの有名なアリアが一部カットされているのは残念ですがそれを差し引いても、ロリン・マーゼル指揮でミラノ・スカラ座オーケストラの演奏も逸品。後世に残る作品を生んでくれたZ監督に感謝!