なぜ防げないか子どものネグレクト死 大阪事件と厚木事件

2014年6月10日 00時50分 | カテゴリー: みんなの健康と福祉, 女性・ジェンダー, 子どもと人権, 映画・オペラ・おたのしみ

神奈川県厚木市で男の子の白骨死体が見つかった事件の衝撃は、2010年に大阪で母親が幼い姉弟の2児を放置し餓死させてしまった事件を思い出させます。いずれも親の養育放棄が子どもを殺してしまった、2つの事件はよく似ています。 

9年ものあいだ放置された厚木市の子は、5歳だった7年前に亡くなったとみられています。食事や水分を十分に与えられず電気のない6畳間。衰弱死したのが7年前というのは、部屋に散乱する弁当のごみなどから死亡時期を推定したのだそうです。 

トラック運転手の父親は、母親が子どもを置いて出て行った後、保育園にも預けず、日ごろから外出時は部屋に閉じ込めていたといいます。事件が発覚した2014年時点ではすでに別のアパートに住みながら、その部屋の家賃6万円は払い続け、遺体が見つからないよう部屋の窓はテープで目張りがされていた。逮捕されて「いずれ衰弱死するという認識があった」と話したという――。 

大阪の事件でも、母親は子どもたちを誰にもゆだねず、仕事にいくときは、姉のほうの3歳の子が外に出て行ってしまわないよう、ドアに目張り用のガムテープを貼っていたといい、行動パターンが同じです。母親の仕事は性を売る類の風俗業でした。 

この大阪2児餓死事件について、女性ライター杉山春さんが『ルポ 虐待』という本でその母親の軌跡を詳細に追っています。幼いときにあった自身の母親の育児放棄、母の病的精神状態のこと、少女時代に受けた性被害、高校の熱血教師だった父親とのぎくしゃくした関係、幼い同士で結婚し親になったカップルの社会的未熟さ、「いいママ」になろうと精一杯努力したこと、離婚を経て貧困から風俗業についたこと…など。 

この本を読んでいると、「ここで子どもを救えた」と思える瞬間が何度もありました。周囲のだれかが手を伸ばしていれば、だれかが強く通報していれば、母親がカギを開けたままにしていたら、子どもは救い出されていた。死なないですんだ。 

それがどの時点なのかを見れば、そこに社会のしくみを見直すポイントがあるのだと思います。子どもの命を最優先にするなら、福祉がもっと権限を持って現場に踏み込めるようにしなければならないし、親をひとりにさせない社会の力が必要なのだと思います。 

蛇足ですがこの大阪事件をヒントに制作されたという映画『子宮に沈める』もみましたが、事件とは似て非なる作話だと思いました。