市民の合意で街なみをリニューアル 松本市の場合

電柱も自販機もないスローライフの街路

長野県茅野市と安曇野市の病院を訪問したついでに、街なみ環境整備事業を視察しに松本に立ち寄りました。松本には小澤征爾のサイトウ・キネンのコンサートに何度か来ていたのに、この街なみのことは知りませんでした。

「ついでに」といま書きましたが、ついでと言っては申し訳ない。松本城下で数百年の歴史をもち発展してきた街なみが時の経過とともに雑然と古びてきたとき、思い切ったリニューアルに取り組んだ整備事業です。

経済成長に乗って中途半端に発展した結果、まち全体が統一感のない、魅力に乏しい景観になってしまっている、というケースは都心でも地方都市でもよく見られます。

なんとなく古びてしまったまち全体に活気を取り戻したい、人びとが散策したくなるようなまちにしたい、と1軒だけで思ってもどうすることもできないけれど、行政と地域が協働で事業を練り上げればこんなことも実現できる、という見本のようなケースが、この松本の場合。

城下町の歴史的町並みを生かし、蔵のあるまち、レトロなまちのイメージを前面に打ち出してデザインに統一感を持たせるよう改修・整備。電柱は地下化、道路は落ち着いたカラー舗装、広告の看板は控えめに。

ここまでくるのに20年かかっています。きっかけは高層マンション建設計画だったそう。ただ反対を言うのでなく、行政の主導で対案を模索して、市民の合意を高めていったプロセスがこの事業を支える基盤になっています。そしてそれこそがまちの財産だなあと思います。

ゆったりと歩ける街路はもちろんバリアフリー、環境配慮がされ、電柱がないばかりか自販機もなかった、と後で気がつきました。