朝鮮学校のドキュメンタリー『ウリハッキョ』をみる

よその国で民族教育を紡ぐということ

「ウリハッキョ」は朝鮮語で「私たちの学校」の意味。札幌市にある小・中・高校まである朝鮮学校の日常を、卒業間近の高校3年生へのインタビューを盛り込みながら撮った、2時間以上の長編ドキュメンタリー映画です。

阿佐ヶ谷で上映会をやるから、とお誘いいただいたので観に行きました。

何の加工もなく、学校と寮の日々が生徒たちや教職員たちの集団生活をとおして描かれます。ここは広い北海道で唯一の朝鮮学校なので、道内各地からやってくる子のため寄宿舎が整備されています。最長12年間ここで過ごす子もいて、そういう子にとっては学校以上のものに違いないです。

冒頭は新学期の初日、大雪のために職員たちが休校の電話連絡をするシーン。先生たちが校庭の雪かきをするシーンでは「私たちの学校」への愛着のようなものがにじみ出ます。先生にとっても「ウリハッキョ」。

新年度の初日、体育館に集まった生徒たちに各クラス担任が発表されるシーン。発表されるごとにキャーッ!と上がる歓声。こんな風に子どもから興奮と歓喜で迎えられる担任の先生って、教師冥利に尽きるというもの。

サッカーの試合で負けた後のみんなの泣きっぷり。感情の素朴な発露というか。そう、映画全編にあふれる素朴さ、自然さがなんだかとても懐かしく感じるのはなぜなんだろう、と考え思い当たるのは、登場人物たちが「よその国」にいて、自国の民族教育を紡いでいるのだ、ということです。ひとつの家族のような絆のつよさと、それを支えるアイデンティティー。

北朝鮮への修学旅行のシーンはめったに見られない映像を見せてくれますが、それすら何の気負いもなく、北の国の「ふつうの」風景を切り取ります。ただ保護者たちには朝鮮教育を受けさせる親としての思いがさまざまあることが語られ、以前阿佐ヶ谷の第九朝鮮学校の歴史についてうかがったこと(こちら)を改めて反すうしました。

キム・ミョンジュン監督は韓国人です。映画製作の企画中に若くして亡くなった妻の遺志をついで撮影に入り、3年以上費やしたそうです。上映会は「もくれんの家」というNPOによる主催、よく開催してくれたと思います。